ネット広告の費用対効果を事前に予測できるのか?
「広告の費用対効果を報告してください」
こういった要望に対して広告代理店はクリック数とかCV数などをまとめたそれらしい報告書を作ることがありますが、果たしてどこまで本心で回答できているのでしょうか?
この記事ではよく言われる「ネット広告は費用対効果が正確に把握できる」なんてあり得ないという話をしながら、それではどうすればいいのか?ということを考えてみました。
まずは因果関係と相関関係
「○○という施策を行ったら△△という結果が得られた」というのが因果関係です。「広告を出稿したら◯◯万人にその広告がリーチした」は確実なのでこれは因果関係ですね。一方で「乗馬を趣味にするとお金持ちになる」は逆の因果関係かまたはまったくの偶然で因果関係ではありません。
それって本当に因果関係?
広告の業界、特にネット広告や中小企業においては施策の費用対効果を把握することはとても重要です。一般的な仕事のやりとり下記のような会話が行われたり、メディアでの成功事例として記載されることがあります。
「Instagramの運用を開始してから問い合わせ数が30%増加しました」
「webサイトをリニューアルしてからCVRが2倍になりました」
深い考察なしにこういった話をすると頭がよくないのかと思われるので注意してください。「○○をしたから△△になった」という論理で話をする際には、それが本当に因果関係になっているのか確認することが必要です。「「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法」では因果関係であるかのチェックポイントとして下記の3つをあげています。
・全くの偶然ではないか?
・交絡因子が存在しないか?
・逆の因果関係は存在しないか?
「Instagramの運用を開始したから」という原因を確実にしたければ、運用した場合と運用しなかった場合を比較しなければなりませんが、タイムマシーンに乗って運用しなかった場合を見ることはできません。
タイムマシーンで過去に戻るのは諦めるとしても、「Instagramの運用を開始する前後で何も変化がないこと」を確認しなければなりません。例えば、他の広告を実施していないか?季節要因や景気の変動ではないか?まったくの偶然ではないか?Twitterで話題になったやテレビで紹介されたなど他の要因ではないか?といったように考えられる変化や原因をすべて検討しなければ正しい因果はわからないのです。
効果を計測できるケース-ABテスト
広告に関わるすべてで効果がわからないわけではありません。
例えばバナーを2種類用意して、同じターゲットにランダムに見せてどちらがよりクリックされるかといったものは検証が可能です。またはサイト訪問者に対してランダムで異なるページを見せて、どちらがより申し込みにつながるかといったことも計測が可能です。ここで重要なのは、その他の条件が同じでランダムであるということ、十分な試行回数があるということです。
広告の費用対効果がわからない理由
なぜ費用対効果を明らかにするのが難しいのでしょうか。
ユーザーが購入や申込みといった行動をするまでには「テレビCM見てコンビニで買う」とか「インスタ見たから買いました」のようなな単純なものではありません。多いケースとしては「ネットの記事で見たことがあって、テレビで紹介されていたのでインスタで検索してみた」とか「比較記事を見ていたら以前知り合いがいいと言っていたものが偶然出てきた」など複数の要因があることが自然です。
よって、SEOや広告、SNSのように施策ごとの費用対効果を算出したいと部下や代理店に依頼をしてしまうのは、一見賢いことを言っているようで実は「この人はなにもわかってないんだな」と思われている可能性があることに注意が必要です。(もちろん大規模なデータ分析をがんばっている人たちもいてまじですごいなと本当に思っており尊敬しているのですが、中小とか零細の少額予算ではそんなことをしても意味がないという話)
費用対効果を想像する
広告代理店や運用会社が知識のあまりないクライアントを騙すことは簡単です。代理店としては効果があったことを説得するためのロジックを組んでクライアントに効果の説明をしますが、やろうと思えば効果がなかったようにロジックを組むことだって可能です。
データは誰が見ても同じものですが、データの解釈やそこから導く結論は人によって異なります。広告もwebに移行するなかでデータを根拠として判断を行う機会が増えましたが、データを生かすこと・間違ったデータに騙されないことが重要です。
そもそもすべてが事前のシュミレーション可能で結果と費用対効果がすべて計測可能なのであればあなたの仕事はなんなのでしょうか?可能な限りデータ基づいた判断をするべきですが、あなたの仕事はそのデータを基本として、それだけでは見えないユーザーや数字だけで判断できないブランドの価値について考えることではないでしょうか。
データをどう解釈してどういう意思決定をするのか?が経営に求められることであり、すべての数字が揃っていないと判断できないようであれば経営を離れることをおすすめします。
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