BtoBマーケにおけるメルマガ施策のすべて
BtoBマーケティングにおいて、メルマガ(メールマガジン)は顧客との関係を強化する重要な手段です。
本記事では、メルマガの種類、効果的な書き方、配信者の設定、数値目標の設定方法、PDCAサイクルを活用した改善方法を詳しく解説します。これらのポイントを押さえてメルマガ運用を最適化しましょう。
メルマガの重要性とその目的
SNSなどのコミュニケーションが発達した現在でも、メルマガ(メールマガジン)は非常に強力なツールとなっています。メルマガの主な目的は以下の通りです。
- 情報提供:顧客に対して最新の製品情報や業界ニュースを提供することで、企業の専門性や信頼性をアピールします。
- 関係維持:定期的なコミュニケーションを通じて、顧客との関係を強化し、リピートビジネスを促進します。
- 行動喚起:セミナー参加やホワイトペーパーのダウンロードなど、具体的なアクションを促すことで、見込み顧客を育成します。
- ブランド強化:定期的なコンテンツ配信により、企業のブランドイメージを維持・向上させます。
メルマガは対象に対して直接アプローチができるメリットが大きく、コストパフォーマンスの高い施策であるため、多くの企業で利用され続けています。C向けのサービスはメールからLINEに移行していますが、BtoBに関してはほぼメールから動いていません。
メルマガの種類と使い分け
メルマガは、目的やタイミングに応じて様々な種類が存在します。効果的に使い分けることで、顧客とのコミュニケーションを最適化し、関係性を強化することが可能です。ここでは、主なメルマガの種類とその使い方について紹介します。
サンクスメール
サンクスメールは、顧客が何かしらのアクションを取った直後に送られるメールです。
顧客に対する感謝の意を伝えるだけでなく、次のステップへの誘導にも役立ちます。例えば、資料ダウンロードやウェビナー参加直後に送ることで、次のアクションを促すことができます。
- 例1:資料ダウンロード後のサンクスメール⇒「資料をご覧いただきありがとうございます。こちらの資料もよく読まれています。」
- 例2:ウェビナー参加後のサンクスメール⇒「ウェビナーにご参加いたきありがとうございました。こちらから無料相談の予約が可能です。」
ステップメール
ステップメールは、顧客のアクションを促すために連続して送るメールのことです。自動化された一連のメールで、顧客の行動に基づいた案内をします。
例えば、化粧品のECでは購入の3日後に到着確認と使用方法のメール、1週間後に使用感のフィードバックを求めるメール、そして使い切った頃の1ヶ月後にリピート購入割引の案内を送ることが考えられます。
BtoBのホワイトペーパーダウンロードの場合は、3日後にさらに詳しい資料を提供し、1週間後にはウェビナーの案内メール、さらに1週間後に無料相談の案内を送るといったステップが考えられます。
一般的なメルマガ
一般的なメルマガは、登録者全員に向けて定期的に情報を提供するものです。
例えばBtoBでは、新製品やサービスの紹介、ウェビナーや展示会の案内、ブログ記事や動画等コンテンツの紹介など、さまざまな使われ方をします。顧客との関係性維持や醸成に加え、申し込みや購入などの具体的な行動を獲得するためにも活用されます。
セグメントを分けたターゲティングの重要性
メルマガの効果を最大限に引き出すためには、顧客をセグメントに分け、それぞれに最適化されたコンテンツを配信することが重要です。
セグメントを分けることで、よりパーソナライズされたメッセージを届けることができ、顧客の興味やニーズに直接応えることができます。これにより、開封率やクリック率、コンバージョン率の向上が期待できます。
- 例:業種別のターゲティングメール「製造業のお客様向けの最新製品情報と成功事例をご紹介します。」
- 例:役職別のターゲティングメール「経営層の皆様へ、最新の業界トレンドと戦略的アドバイスをお届けします。」
メルマガを適切に使い分けることで、顧客とのエンゲージメントを高め、ビジネスの成長につなげることができます。それぞれのメルマガの特性を理解し、効果的に活用していきましょう。
メルマガ作成の基本的な考え方
メルマガを効果的に運用するためには、いくつかの基本的な考え方を押さえておくことが重要です。
ここでは、ユーザーにとって有益な情報の提供から、メールの目的とKPIの設定、PDCAサイクルの活用について詳しく説明します。
ユーザーにとって有益な情報の提供
メルマガの最大の目的は、ユーザーにとって有益な情報を提供することです。単に自社の製品やサービスを宣伝するだけでは、読者の心に響きません。むしろ、ユーザーが日々の仕事で直面する課題を解決するヒントや、業界の最新トレンドなど、実用的な情報を提供することで信頼関係を築けます。
例えば、製造業向けのメルマガであれば、「コスト削減のための5つのポイント」や「生産性向上に成功した企業の事例紹介」といった内容が喜ばれるでしょう。これらの情報は、読者の仕事に直接役立つものばかりです。
業務用のメールボックスは多くのメールで溢れています。ありふれた情報や面白くないコンテンツは信頼の低下やオプトアウト(メルマガ配信停止)につながります。
メールの目的とKPIの設定
メルマガを送る際には、「このメールで何を達成したいのか」という明確な目的を持つことが重要です。そして、その目的がどれだけ達成できたかを測るための指標(KPI)を設定しましょう。
具体的な目的としては、セミナーの申し込み、MQL(マーケティングによる見込み客)の獲得、商談化数の増加などが考えられます。これらの目的に基づいてKPIを設定し、その成果を定期的に評価することで、メルマガの効果を最大化することができます。
- 例1:セミナーの申し込み数「次回のセミナーにご参加ください。詳細とお申し込みはこちらから。」
- 例2:MQLの獲得「最新のホワイトペーパーをダウンロードして、詳しい情報を手に入れましょう。」
- 例3:商談化数「無料相談をお申し込みください。専門家があなたの課題を解決します。」
メールの指標をウォッチしながらPDCAを回す
メルマガの運用においては、各種指標(開封率、クリック率、コンバージョン率など)を定期的にウォッチし、その結果を基にPDCAサイクルを回すことが重要です。「メルマガのPDCAサイクル」で詳しく説明します。
効果的なメルマガの書き方
メルマガは、お客様とのつながりを深める強力なツールです。ただし、効果を最大化するには、いくつかのポイントに注意を払う必要があります。特に重要なのが、本文とタイトルの作成です。
本文の作成
本文は短く:スマホでの閲覧が主流の今、長文は避けましょう。例えば、製造業の新製品案内なら、「新製品の特徴」「活用事例」「問い合わせ先」といった3つの項目に絞るのがおすすめです。
送信フォーマットの決定と手間の削減:送信フォーマットを決めておくことで、手間を削減しミスを防ぐことができます。毎回一から作るのではなく、テンプレートを活用しましょう。例えば、「挨拶」→「本文」→「お知らせ」→「締めの言葉」という構成を決めておけば、内容の入れ替えだけで済みます。
デザインや構成に時間をかけるよりも、決まったフォーマットで送信回数を増やすほうが高い成果を得られるでしょう。
明確な次のステップを示す:メルマガの目的は、読者に行動を起こしてもらうことです。「詳細はこちら」や「今すぐお申し込み」など、クリックしたくなるボタンや文言(CTA)を適切に配置しましょう。
メールタイトルの作成
15文字〜30文字で作成:PCのメーラーやスマホのメールアプリのタイトル部分は15文字程度しか表示されないこともあります。この15文字でメールを開いてもらえるようなタイトルをつけてください。長いタイトルをつけても、それはメールを開いてからしか見れないので意味がありません。
「7月限定!夏の省エネ対策セミナー」のように、要点を押さえつつ興味を引くタイトルを目指しましょう。
4U(有益性・緊急性・具体性・独自性)を意識する:タイトルで、ユーザーにとって有益であること、緊急性があること、具体的であること、そして独自性があることを記載できると開封率を高めることができます。
- 例1:有益性「今すぐ使える」
- 例2:緊急性「今週末まで」
- 例3:具体性「セミナー開催:最新のデジタルマーケティング動向」
- 例4:独自性「業界初」「新サービス」
例えば、建設業向けなら「【あと3日】現場の生産性を2倍にする、当社独自のITツール活用法」といったタイトルが効果的でしょう。
以上のポイントを押さえることで、読者の興味を引き、行動を促すメルマガを作成できます。大切なのは、一度に完璧を目指すのではなく、継続的に改善を重ねていくことです。メルマガの反応を見ながら、少しずつ最適化していきましょう。
配信者の設定とメールの開封率向上
メルマガの成功は、内容だけでなく、「誰から」「いつ」届くかにも大きく左右されます。ここでは、中小企業の皆さまに役立つ、開封率を高めるためのポイントをご紹介します。
個人名を活用して親近感を演出する
企業名だけでなく、担当者の名前を入れることで、メールの印象がぐっと身近になります。例えば:
- 「田中太郎(○○工業 営業部)」
- 「佐藤花子(△△商事 お客様サポート)」
このように設定すると、「ああ、あの人からのメールだ」と認識されやすくなります。
以前、メルマガの配信者名に実在しない女性の名前を使って開封率を向上させたことを公開して批判を受けた企業もありましたが、それだけ送信者名は開封率その他指標に影響を与えるということです。
一貫性を保つ
一度決めた配信者名は、できるだけ変更しないようにしましょう。例えば、毎回違う担当者名で送ると、逆に不信感を抱かれる可能性があります。
配信日時の最適化
配信日時の最適化も、メルマガの効果を高めるために欠かせない要素です。開封されやすい時間帯や曜日を検証し、最適なタイミングで配信することで、開封率を向上させることができます。
開封されやすい時間帯と曜日の検証
BtoBマーケティングにおいては、一般的に通勤時間(朝・晩)やお昼休憩(12時頃)が効果的とされています。
通勤時間(朝・晩):多くのビジネスパーソンが、通勤中にスマホでメールをチェックする習慣があります。例えば、朝8時頃や夕方6時頃に配信すると、電車内でゆっくりメールを読んでもらえる可能性が高まります。
お昼休憩(12時頃):一般的な昼休憩の前の時間も高い開封率が期待できます。11:50や12:10配信の開封率が高い傾向がありましたが、ターゲットの業界やオーディエンスにもよるので検証が必要になります。
ただし、これはあくまで一般的な傾向。自社の顧客層に合わせて、実際に配信時間を変えてみて、どの時間帯が最も反応がよいか、しっかりデータを取って検証することが大切です。
例えば、毎週火曜日の朝9時と、木曜日の昼12時に同じ内容のメルマガを配信してみて、どちらの開封率が高いか比較してみるのもいいでしょう。建設会社の経営者向けなら、現場が落ち着く夕方4時頃の配信が効果的かもしれません。
メルマガの数値目標設定
メルマガの効果を測定し、継続的に改善するためには、明確な数値目標を設定することが不可欠です。ここでは、一般的な数値目標の設定方法と、各コンテンツごとの目標例について説明します。
一般的な数値目標の設定
メルマガの効果を評価するための主要な指標として、到達率、開封率、反応率、コンバージョン率が挙げられます。
- 到達率:送信したメールが受信者の受信トレイに届いた割合
- 開封率:受信者がメールを開封した割合
- 反応率:受信者がメール内のリンクをクリックした割合
- コンバージョン率:受信者がメールを通じて特定のアクション(資料請求、お問い合わせなど)を完了した割合
例えば、工作機械メーカーAさんの場合、新製品のカタログ請求を促すメルマガを1000人に送信したとします。そのうち950通が届き(到達率95%)、190人が開封し(開封率20%)、57人がリンクをクリック(反応率6%)、最終的に19人が資料請求をした(コンバージョン率2%)という具合です。
ここで注意したいのは、特定の項目だけを改善しても、全体の効果は限定的だということ。例えば、開封率だけを上げても、その後のアクションにつながらなければ意味がありません。バランスの取れた改善が必要不可欠なのです。
各コンテンツごとの目標例
コンテンツの種類によって、目標とする数値は異なります。例えば、セミナーの案内メールであれば、開封率やクリック率に加えて、セミナーへの申し込み数が重要な指標になります。
一般的に、ホワイトペーパーのダウンロードやセミナー案内などのメルマガでは、開封率15〜20%、コンバージョン率2〜3%程度が一つの目安となります。ただし、送信数や扱う商材によって大きく異なる場合もあるので、自社の状況に応じて柔軟に設定しましょう。
セグメント別の数値目標
リストの新規性や獲得チャネルごとに異なる目標設定も重要です。
例えば、新規顧客リストに対しては高い開封率を期待し、既存顧客リストに対しては高いコンバージョン率を目指すなど、ターゲットに応じた目標設定を行うことで、より効果的なメルマガ運用が可能になります。
新規リスト⇒高い開封率とクリック率を目指す
例)IT関連の展示会で獲得した名刺情報から作成したリスト
既存顧客リスト⇒高いコンバージョン率を目指す
例)過去1年以内に製品を購入した顧客リスト
特定のセグメントリスト:ターゲットに合わせた具体的な目標設定
例)過去半年以内に問い合わせをしたが成約に至らなかった見込み客リスト
業界・企業規模・役職別のセグメントリスト作成
送信リストを細かくグループ化すると、より高いメルマガの成果が期待できます。グループ化・セグメント理由の例としては、業界別、企業規模別、役職別に顧客を分類し、それぞれの特性に合わせたコンテンツを提供することが考えられます。
- 業界別セグメント:製造業、IT業界、医療業界など、それぞれの業界に特化した情報を提供
- 企業規模別セグメント:大企業、中小企業、スタートアップなど、企業の規模に応じたニーズに答える
- 役職別セグメント:経営層、マーケティング担当者、技術担当者など、役職に応じた専門的な情報を提供
メルマガのPDCAサイクル
メルマガの効果を継続的に改善するためには、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回すことが重要です。ここでは、実行後のチェックポイントと、想定数値に達していない場合の対策について説明します。
実行後のチェックポイント
メルマガ配信後は、以下の3つの指標を中心に効果を測定しましょう。これらの数値を把握することで、改善すべきポイントが明確になります。
- 開封率:メールを開いてもらえたかどうかを示す指標です。例えば、営業部長向けのセミナー案内メールの場合、「30%以上の開封率」を目標にするのが一般的です。
- CTR(クリック率):メール内のリンクがクリックされた割合を表します。例えば、新製品の案内メールなら「10%以上のCTR」を目指すといいでしょう。
- CVR(コンバージョン率):最終的な成果(資料請求や申し込みなど)につながった割合です。業種や商材によって大きく異なりますが、B2Bの場合「2〜5%のCVR」を目標とするケースが多いです。
想定数値に達していない場合の対策
メルマガの効果が期待通りに達しない場合、以下のような対策を講じることで改善が可能です。
開封率の課題
タイトル改善:「社長様必見!経費50%削減の秘訣」など、具体的なメリットを明示したタイトルに変更します。
送信時間の見直し:例えば製造業の経営者なら、朝8時台や昼休みの12時台など、メールをチェックしやすい時間帯に配信時間を調整します。
CTRの課題
内容とタイトルの一致:タイトルで約束した内容を本文でしっかり説明し、「クリックする価値がある」と思わせることが大切です。
CTAの最適化:「今すぐ資料ダウンロード」など、行動を促す明確なボタンを目立つ位置に配置します。
CVRの課題
メール内容とLP内容の一致:メール内の情報とランディングページ(LP)の内容を一致させ、受信者がスムーズに行動できるようにする。
メルマガは比較的低コストで高い効果が見込める施策ですので、優先度高く実施したいものです。
まとめ
メルマガ施策はリストの数を貯めるまでは大変ですが、ある程度のリストを確保した後は非常にインパクトの大きい施策になります。一方で、リスト数が50や100くらいであれば、そこまで時間をかける必要はありません。
1時間かけてブログ記事を数百文字追記するくらいであれば、メルマガのタイトルを検討したり、CTAボタンの作成に時間をかけたほうがよっぽど大きな成果を得られるでしょう。この記事にある基本を押さえて効果的な運用を実施してください。