低予算・少額予算のリスティング広告で成果を出すポイント

リスティング広告

リスティング広告をはじめとするネット広告のメリットの一つは、「広告費予算を自由に設定できる」点です。テレビCMや雑誌広告、ポスターなどの伝統的な広告手段には固定された価格が設定されていますが、ネット広告では1万円でも1億円でも、任意の金額を予算として設定することができます。

本記事では、月額30万円以下の広告費を「少額予算」と定義し、このような低予算のリスティング広告を運用する際や、代理店に依頼する際の注意点、そして少額予算でも成果を上げるためのポイントについて考察しています。

少額予算のリスティング広告が難しい理由

予算が大きいアカウントの運用が難しいと感じるかもしれませんが、予算が小さいアカウントが必ずしも簡単とは限りません。少額予算のアカウントには、独自の課題が存在します。

データが集まらない

少額予算アカウントの難しさの要因は「データ量の少なさ」にあります。

少額予算アカウントの主な課題は「データ量の少なさ」です。 リスティング広告や他のネット広告の特徴は、配信データを基に効果を向上させる点にあります。これは「どのキーワードでの検索者に広告を表示するか」「どの広告がよくクリックされるか」「どのページが問い合わせにつながりやすいか」などのデータを利用して、広告配信を最適化することを意味します。

しかし、予算が少ない場合、広告の配信量も少なく、テストの回数や得られるデータも限られます。 このため、最適化に時間がかかる、または最適化が難しくなるのが少額予算の運用の難しさです。

代理店のモチベーションが低い

リスティング広告などの運用型広告は、継続的な運用が必要です。多くの企業はこの運用業務を外部の代理店に依頼しますが、代理店が少額予算の広告運用に消極的であることも、少額予算の広告運用が難しい理由の一つです。

リスティング広告などの運用型広告は、継続的な運用が必要です。多くの企業はこの運用業務を外部の代理店に依頼しますが、代理店が少額予算の広告運用に消極的であることも、少額予算の広告運用が難しい理由の一つです。

代理店の利益となる手数料は、広告費に連動する形で設定されることが多いです。例えば、広告費が100万円の場合、手数料は20万円となりますが、広告費が10万円の場合は手数料は2万円となります。このように、少額予算の案件は代理店にとって収益性が低く、結果としてスキルの高い担当者をアサインするのが難しくなります。このため、運用の質が低くなり、成果を上げるのが難しくなることがあります。

関連記事:ダメなリスティング広告代理店を見抜く方法を同業者が解説

代理店が月5万円の手数料でできること

広告費が月額30万円、コミッションが20%の場合、運用手数料は月6万円となります。月5万円程度の運用手数料で代理店や運用会社が提供できるサービスについて考察します。

関連記事:なぜリスティング広告を手数料が安い業者に依頼すると失敗するのか

広告運用代行には固定の原価が存在しないため、費用の内訳は運用者の人件費や、契約獲得のための営業コストなどが考えられます。これを考慮すると、月5万円の運用手数料で代理店が提供できるサービスは、時給5,000円の運用者を約10時間稼働させる程度となります。この時間内で広告のモニタリング、施策の検討、運用、レポート作成や報告を行うのは容易ではありません。

「少額案件には十分な工数をかけられない」ことも、少額予算案件が成功しにくい理由の一つです。

少予算でも成果を出すための工夫

成果が出るまでに時間がかかり費用をかけて外注するのも難しい少額リスティング広告ですが、少しでも成果をよくするために優先度の高い改善点を考えてみました。

ターゲットやキーワードを絞る

機械学習による広告の最適化が進む昨今の広告運用では「運用者はターゲットを絞りすぎず広いターゲットに配信すること」が推奨されます。しかしこれは獲得したクリックやコンバージョンを十分獲得できる予算がある場合の話であって、予算が限られている場合には、ある程度コンバージョン(購入や問い合わせなど目的としているもの)が見込めそうなターゲットやキーワードへの絞り込みを行うべきです。

配信対象を年齢や性別、所在地で限定したり、Webサイトでコンバージョンにつながっているクエリ(検索キーワード)を参考にキーワード設定を行うなど、できるだけ成果につながる可能性が高いものにターゲットを絞ることが低予算運用のポイントになります。

関連記事:失敗しないリスティング広告のキーワード選びを徹底解説

リマーケティング広告だけで始める

リスティング広告(Google 広告やYahoo!広告)は、検索キーワードに対して広告を出す「検索広告」と、webサイトやアプリ内にバナーなどで表示する「ディスプレイ広告」に大きく分けられます。

ディスプレイ広告のなかでも、サイトやページの訪問者に対して画像やテキストでアプローチするリマーケティング広告はCPAを抑えやすい広告の種類です。「予算が非常に限られているけどリスティング広告を試したい」という場合には、リマーケティングだけで開始するというケースも有効です。

またリマーケティングはバナーで行われることが一般的ですが、検索(サーチ)でも活用することが可能です。検索広告向けリマーケティングを活用すると、「過去にサイトに訪問したことのあるユーザーがこういったキーワードを検索した際に広告を表示する」のようなことが可能になります。

参考ページ:Google広告 検索広告向けリマーケティング リストの概要

成果に必要な時間を理解する

運用型広告は、運用を通じて成果を向上させるものです。特に少額予算の場合、長期的な視点が必要です。

“予想CPA1万円、月の予算10万円”で広告を行う場合には、コンバージョンの発生は月に10件前後です。このようなケースでは1ヶ月かかっても十分なデータ量にはならず、成果の良し悪しを判断するためには数ヶ月を要するかもしれません。

リスティング広告は短期間での成果が期待されることが多いですが、即効性に期待しすぎると判断ミスを招く可能性があります。

広告費はどのくらい準備しておけばいいか

「リスティング広告を検討しているのですがどれくらいの予算で始めるべきですか?」

「10万円くらいの少額でも可能ですか?」

というご相談も多くいただきます。この質問に対しては「必要な予算は業種・業界と目標によってまったく異なる」と答えるしかありません。

一般的には、想定CPAの10倍程度の月額予算を確保することが望ましいと言えます。

例として、BtoBのビジネスで見込み顧客からの問い合わせを目指す場合を考えてみましょう。業界の平均や過去の広告運用データを基に、問い合わせの予想単価が3万円と仮定した場合、月額30万円程度の予算でのスタートがおすすめです。一方、資料のダウンロードに関する予想CPAが5,000円であれば、月5万円や10万円の予算で始めるのも適切かもしれません。

関連記事:【結論】リスティング広告の費用はいくらで始めるべきなのか?

少額・低予算リスティング広告事例

小さな予算での運用やまずは少額予算からリスティング広告を始めてみた事例を紹介します。

機械商社

製造業向け製品を取り扱う商社のリスティング広告事例です。BtoBの場合でも、少額運用が有効であることがわかります。

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特徴としては、

  • ターゲット(検索ボリューム)は大きくないが一定数確実に存在する
  • 見込み顧客の3社程度の比較検討に入ることが重要
  • 受注や成約による1件あたりの売上・利益が大きい

このような状況では、検索結果の上位に表示されず、見込み顧客に接触できないことは大きな機会損失となります。リスティング広告を利用して見込み顧客との接点を作ることで、平均して月額10万円の予算で5件の反響、2件の商談を獲得できました。

成約に至った場合の単価が大きいため、大きな金額を投じることができます。しかし、需要(検索回数)は限られているため、仮に予算を10万円から100万円に増やしても、問い合わせや商談が大きく増えることは期待できません。このような状況では、小さな予算でも継続的に配信することが効果的です。

関連記事:低予算で始めるBtoB(製造業/メーカー)リスティング広告

ツール(SaaS)

リスティング広告は、テストとしての活用も有効です。検索回数を調査することで、実際にニーズが存在するかを確認できます。さらに、実際にランディングページにアクセスしてもらうことで、サービスへの需要を確認することができます。

リスティング広告は、顕在化したニーズに対して直接アプローチできる広告です。これにより、見込み顧客との商談を設定することができ、ユーザーヒアリングも可能となります。適切な検索語句でランディングページにアクセスしても反応が得られない場合、訴求やターゲットの見直しが必要となることも考えられます。

代理店と自社運用の選択

代理店に依頼するメリット

専門知識の活用

代理店は多様な業種や予算規模のクライアントとの取引経験が豊富です。そのため、他の案件で検証された効果的な施策を導入することは、成果向上の近道となります。

効率的な業務運営

自社でマーケティングの専門家を採用し育成するのは、時間とコストがかかります。代理店のリソースを利用することで、商品開発や営業活動などのコア業務に専念できます。

成果へのコミットメント

契約期間や条件が設けられているものの、期待される成果を出すためのプレッシャーが代理店には常に存在します。これは、社内のメンバーとは異なる種類のコミットメントを期待することができる点です。

代理店に依頼するデメリット

初期投資の必要性

代理店との取引を開始するには、初期投資や運用コストが発生します。これらのコストは、サービスの内容や契約期間によって変動します。

コミュニケーションの難しさ

自社のブランドや製品の特徴を外部の代理店に正確に伝えるのは容易ではありません。

このようなギャップをなくすためには、質の高いコミュニケーションが欠かせません。

自社運用のメリット

施策の柔軟性

キャンペーンの効果に疑問を感じた場合、外部の代理店との調整を待つことなく、即座に方針の見直しや修正が可能です。

データの完全な管理

顧客の購買履歴や閲覧データなどの重要な情報を、他社と共有せずに独自で管理・活用することができます。

自社運用のデメリット

リソースの限界

デジタルマーケティングの専門家が少ない場合、戦略の策定やデータ分析が難しくなることが予想されます。

知識のアップデートの難しさ

広告運用やデジタルマーケティングのベストプラクティスは日々進化しています。そのため、情報を常にキャッチアップし続けることは、専門外のメンバーにとって大きな負担となるでしょう。

予算の大小は問題ではない

これまで多くの少額予算アカウントを拝見してきましたが、「予算が小さいだけでリスティング広告が成功しない」というケースは存在しません。

リスティング広告は基本的に、競合と同じ広告枠やユーザーを目指すもので、一定の相場が形成されています。簡単に言えば、10万円の広告費を投じれば10万円分の結果が、100万円の広告費なら100万円分の結果が得られるはずです。

しかし、「予算に対して非現実的な成果を期待している」という失敗例は頻繁に見受けられます。

例えば、問い合わせの獲得単価が1万円の業界で、「月10万円の予算で30件の問い合わせを得たい」という期待は、特別にサービスが優れている場合を除き、現実的ではありません。

少額・低予算のリスティング広告におけるキーは、予算の大小よりも適切な目標設定にあります。この点をしっかりと理解し、まずは小さなステップとしてリスティング広告を始めてみるのが良いアプローチでしょう。


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Posted by kaizuka