少額予算のリスティング広告で成果を出すポイント
リスティング広告をはじめとするネット広告のメリットの一つは、「広告費予算を自由に設定できる」点です。テレビCMや雑誌広告、ポスターなどの伝統的な広告手段には固定された価格が設定されていますが、ネット広告では1万円でも1億円でも、任意の金額を予算として設定することができます。
本記事では、月額30万円以下の広告費を「少額予算」と定義し、このような低予算のリスティング広告を運用する際や、代理店に依頼する際の注意点、そして少額予算でも成果を上げるためのポイントについて考察しています。
少額予算のリスティング広告が難しい理由
予算が大きいアカウントほど運用が難しいと感じるかもしれませんが、予算が小さいアカウントが必ずしも簡単とは限りません。少額予算のアカウントには、独自の課題が存在します。
学習のためのデータ量不足
少額予算アカウントの難しさの要因は「データ量の少なさ」にあります。
リスティング広告を含むインターネット広告の費用対効果がよい理由のひとつに、配信データを基にして運用を行うことで効果を改善していくといった点があります。これは「どのキーワードで広告を表示するか」「どの広告がよくクリックされるか」「どのページが問い合わせにつながりやすいか」といったデータを活用して、広告配信を最適化することを意味します。
Google 広告のスマート自動入札(自動入札)に関する説明は下記の通りです。
Google 広告のスマート自動入札とスマート広告ソリューションでは、AI を使用して数百万ものシグナルをリアルタイムで分析し、効果的なタイミングで適切なユーザーに適切なメッセージを表示します。
引用:Google 広告のスマート自動入札とスマート広告ソリューションについて – Google 広告 ヘルプ
Google AI ソリューションを使用すれば、広告や単価設定を個別に最適化しなくても、すばやく成果を向上させることができます。
しかし、少額予算アカウントの場合、広告の配信量も少なく、テストの回数や得られるデータが限られることになります。 これによって最適化に時間がかかる、または最適化が十分進行しないというのが少額予算の運用の難しさです。
少額予算に適した代理店がない
リスティング広告などの運用型広告は、継続的な運用を必要とします。多くの企業はこの運用業務を外部の代理店に依頼しますが、代理店が少額予算の広告運用に消極的であることも、少額予算の広告運用が難しい理由のひとつです。
代理店の利益となる手数料は、広告費に連動する形で設定されるケースが多いです。例えば、広告費が100万円の場合、手数料は20万円となりますが、広告費が10万円の場合は手数料は2万円となります。
後者のような少額予算の案件は代理店にとって収益性が低く、結果としてスキルの高い担当者をアサインするのが難しくなります。このため、少額予算のアカウントは運用の質が低くなり、結果的に成果を上げるのが難しくなることがあります。
月5万円の手数料で代理店ができること
代理店のなかには手数料が格安であることや少額予算にも対応していることを謳っているところも少なくはありません。
仮に広告費が月額30万円でコミッション(手数料率)が20%の場合、運用手数料は月6万円となります。月5万円程度の運用手数料で代理店や運用会社が提供できるサービスがどのようなものか考察します。
運用手数料の内訳として、
- 運用者の人件費
- マネジメントのコスト
- 契約獲得のための営業コスト
- 会社の利益
などが考えられます。
代理店によってこれらの割合は変わりますが、仮に運用者の時給を5,000円とすると、運用にかけられる時間は月5時間程度が関の山で、毎月の運用に10時間かけるとほぼ確実に赤字になります。月に5時間でアカウントのモニタリング、施策の検討と実施、レポート作成や報告を十分に行うのは現実的ではありません。
広告運用において短時間で高い成果を上げるためには、作業の厳選など抜本的な効率化が必要になります。それができない多くの代理店は低コスト(低スキル)な運用者の長時間労働によって対応するしかありません。
特に広告専業ではなくツールベンダーやコンサルティング会社が広告運用も一括して請けているケースに多いのですが、知識の少ない(ほぼない)担当者が数ヶ月に1回アカウントを見る程度のような運用になっているアカウントもよく見かけます。運用会社が担当していても放置されているアカウントも少なくありませんので、なぜ手数料が安いのかについては注意する必要があります。
関連記事:騙されないためのリスティング広告運用手数料の全知識
少額予算でも成果を出すための工夫
成果が出るまでに時間がかかり費用をかけて外注するのも難しい少額リスティング広告ですが、少しでも成果をよくするために優先度の高い改善点を考えてみました。
ターゲットやキーワードを絞る
機械学習による広告の最適化が進む昨今の広告運用では「ターゲットを絞りすぎず広いターゲットに配信すること」が推奨されます。しかしこれは獲得したクリックやコンバージョンを十分獲得できる予算がある場合の話であって、予算が限られている場合には、ある程度コンバージョン(購入や問い合わせなどの目的)が見込めそうなターゲットやキーワードへの絞り込みを行うべきです。
配信対象を年齢や性別、所在地で限定したり、Webサイトでコンバージョンにつながっているクエリ(検索キーワード)を参考にキーワード設定を行うなど、できるだけ成果につながる可能性が高いオーディエンスにターゲットを絞ることが低予算運用のポイントになります。
リマーケティング広告だけで始める
リスティング広告(Google 広告やYahoo!広告)は、検索キーワードに対して広告を出す「検索広告」と、webサイトやアプリにバナーなどで表示する「ディスプレイ広告」に大きく分けられます。
ディスプレイ広告のなかでも、サイトやページの訪問者に対してアプローチするリマーケティング広告はCPA(コンバージョン単価)を抑えやすい広告のひとつです。「予算が限られているけど広告を試したい」という場合には、リマーケティング広告だけで開始するというケースも有効です。
またリマーケティングはディスプレイ広告で行われることが一般的ですが、検索広告でも活用することが可能です。検索広告向けリマーケティングを活用すると、「過去にサイトに訪問したことのあるユーザーがこういったキーワードを検索した際に広告を表示する」のようなことが可能になります。
仕組み
引用:検索広告向けデータ セグメントについて – Google 広告 ヘルプ
作成したオーディエンス セグメントには、広告主様のサイトを訪れたものの何も購入しないで離脱したユーザーが含まれるため、オーディエンス セグメントを検索広告のターゲットに設定すると、そのようなユーザーがその後 Google 検索で何か探しているときに、自社商品を再度思い出してもらうことができます。そうした潜在顧客の訪問歴を踏まえて入札単価の設定、広告の作成、キーワードの選択を行いましょう。
成果に必要な時間を理解する
運用型広告は、運用を通じて成果を向上させるものです。特に少額予算の場合、長期的な視点が必要です。
「予想CPA(コンバージョン単価)が1万円、月の広告予算10万円」で広告を行う場合、月に獲得できるコンバージョンは10件前後です。3件しか獲得できないこともあれば予想以上に15件獲得できることもあるでしょう。1ヶ月の結果で成果の良し悪しを判断するべきではありません。
リスティング広告は短期間での成果が期待されることが多いのですが、即効性に期待しすぎると判断ミスを招く可能性があります。
本当に準備しておくべき広告費
「リスティング広告を検討しているのですがどれくらいの予算で始めるべきですか?」
「10万円くらいの少額でも可能ですか?」
というご相談も多くいただきます。この質問に対しては「必要な予算は業種・業界と目標によってまったく異なる」と答えるしかありません。
理想としては想定しているコンバージョン単価の10倍程度の月額予算を確保することが望ましいと言えます。
例として、BtoBのビジネスで見込み顧客からの問い合わせを目指す場合を考えてみましょう。
業界の平均や過去の広告運用のデータを基に、問い合わせの予想単価が3万円と仮定した場合、月額30万円程度の予算でのスタートがおすすめです。資料のダウンロードに関する予想CPAが5,000円であれば、月5万円や10万円くらいの予算で始めてみてもいいかもしれません。
関連記事:【結論】リスティング広告の費用はいくらで始めるべきなのか?
少額・低予算リスティング広告事例
少額予算でリスティング広告を始めてみた事例を紹介します。
機械商社の少額リスティング広告事例
製造業向け製品を取り扱う商社のリスティング広告事例です。BtoBの場合でも、少額運用が有効であることがわかります。
下記のようなマーケット環境において、
- ターゲット(検索ボリューム)は大きくないが一定数確実に存在する
- 見込み顧客の3社程度の比較検討に入ることが重要
- 受注や成約による1件あたりの売上・利益が大きい
自然検索の上位に表示されないことで見込み顧客に接触を獲得できないのは大きな機会損失となります。リスティング広告を利用して見込み顧客との接点を作ることで、月額10万円の予算で平均して月5件の反響、月2件の商談を獲得できました。
成約に至った場合の単価が大きいため、広告費として大きな金額を投じることもできます。しかし、需要(検索回数)は限られているため、仮に予算を10万円から100万円に増やしても、問い合わせや商談が大きく増えることは期待できません。このような状況では、小さな予算で継続的に配信し続ける効果的です。
関連記事:低予算で始めるBtoB(製造業/メーカー)リスティング広告
ツール(SaaS)の少額リスティング広告事例
リスティング広告は、サービスのテストとしての活用も有効です。
検索回数を調査することで、実際にニーズが存在するかを確認できます。さらに、実際にランディングページにアクセスしてもらうことで、サービスへの需要や訴求している点が合っているかを確認することができます。
リスティング広告は、顕在化したニーズに対して直接アプローチできる広告です。適切な検索語句でランディングページにアクセスしても反応が得られない場合、訴求やターゲットの見直しが必要となることも考えられます。
成功・失敗に予算の大小は関係ない
リスティング広告の仕組みから考えれば当然なのですが、「予算が少ないからリスティング広告がうまくいかない」のではありません。
リスティング広告はキーワードやターゲットを入札によって競うものであり、多少の差はあれどクリック単価やコンバージョン単価には一定の相場が形成されています。簡単に言えば、10万円の広告費を投じれば10万円分の結果が、100万円の広告費なら100万円分の結果が得られるはずです。
リスティング広告が失敗と認識されている際に多いパターンが「予算に対して非現実的な成果を期待している」ケースです。例えば、問い合わせの獲得単価が1万円の業界で、「月10万円の予算で30件の問い合わせを獲得したい」という期待は、特別にサービスが優れている場合を除き、現実的ではありません。
少額・低予算のリスティング広告におけるキーは、予算の大小よりも適切な目標設定にあります。この点をしっかりと理解し、まずは小さなステップとしてリスティング広告を始めてみるのが良いアプローチでしょう。
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