これって違法?ピンタレストの著作権と安全な商用利用について解説

ピンタレストの月間利用者数は2億5千万人を超え、日本国内でも数百万〜1,000万ユーザーまで成長しており、徐々にピンタレスト運用を導入する企業が増加しています。
ピンタレストの特徴として
ユーザーの79%が女性
ユーザーの58%がタブレットからPinterestを閲覧
ユーザーの88%が「ピン」した製品を購入する
ユーザーの49%が「ピン」した中から5つ以上の製品を購入済
のようなものがあり急成長しているピンタレストなのですが、運用にあたって気になる点が『著作権』に関する内容です。ピンタレストはネット上にあるコンテンツを収集し自分のお気に入りのボードを作成する(ピンする)といった使われ方をするのですが、その収集するコンテンツは他のユーザーによってアップされたものでも問題ないのでしょうか。
結論としては著作権を意識しないピンタレスト運用には非常にリスクがあるということです。このピンタレストの著作権問題について詳しく調べてみました。
著作権に関するPinterestの公式見解
Pinterestは著作権について公式の見解と利用規約を発表しているので、まずはこれを参考にしてみます。
Pinterest 利用規約の改訂について | Pinterest Policy(発効日:2018年5月1日)
3-b Pinterest にコンテンツを投稿した場合、Pinterest はそれを他のユーザーに表示し、他のユーザーはそのコンテンツを保存することができます。
3-c コンテンツを投稿した場合、ユーザーはそのコンテンツを提供して Pinterest 改善のために使用することを許可したものとします。
「Pinterestに投稿した画像は他のユーザーが保存する(自分のボードにピンして表示させる)ことができるよ」という内容です。ということは自分以外のアカウントがピンタレストに投稿している画像については自分のボードにピン(リピン)しても基本的には問題ないということになります。
8 あなたの Pinterest におけるビジネス行為が原因で Pinterest が訴えられた場合、その費用を負担するのはユーザーのあなたです。商用目的で使用する場合は、Pinterest の使用を開始する前に法人向けアカウントを作成し利用規約(法人向け)に同意する必要があります。
仮にユーザーが著作権侵害などで訴えられたりした場合は、ユーザーの訴訟費用や罰金はユーザーが支払うのはもちろんのこと、ピンタレストの分も持ってねという内容です。
また個人で楽しむのではなく企業アカウントやメディアのアカウントとして商用利用をするなら法人向けアカウントにすることが必須になります。法人アカウントとして利用するのであればピンタレストAnalyticsなどで詳細な数字も確認できますし手間もかからないので必ずやっておきましょう。
12 利用規約は、カリフォルニア州の法律に従います。
EEA 域内の場合、これは法人には適用されますが消費者には適用されません。EEA 域内の消費者は、居住国の裁判所に従うものとします。
EEAとはEU28ヶ国にリヒテンシュタイン、アイスランド、ノルウェーを加えた31カ国のことを指しますので、日本の場合はカリフォルニアの法律に従うということです。現実に起こり得るかは別として「裁判することになったからからカリフォルニアに来い」なんて言われたら非常に困ります。
2. 罰則
著作権侵害は犯罪であり、被害者である著作権者が告訴することで侵害者を処罰することができます(親告罪)。著作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金、著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金などが定めれれています。また、法人などが著作権等(著作者人格権を除く)を侵害した場合は、3億円以下の罰金となります。
こちらは公益社団法人著作権情報センター『著作権・罰則など』によるものですが、法人による著作権侵害の罰金は最大3億円のようです。
参考:著作物を無断で使うと? | 著作権って何? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
著作権的に問題ないもの/リスクのあるもの
ピンタレストによる著作権の見解を見てきましたが、ここから判断すると結局どういったものをアップするのは安全でどういったものにはリスクがあると考えられるのでしょうか。
<安全なもの>
- 自身自身がそのコンテンツ(写真や動画)の著作権を所有している場合
- コンテンツの著作権者に掲載の許可を得た場合
- Pinterestの共有ボタンがあるサイトからのピン※
- Pinterestにアップされているもの※
※Pinterestに上げられている個々の画像が著作権をクリアしているというわけではないので厳密には個別の確認が必要です。
<リスクのあるもの>
- 上記に当てはまらないものすべて
実際にはピンタレストはweb上の様々な画像をメモやブックマークとしてボードに管理するという使われ方をされているのですが、これも取り締まりや著作権侵害の申し出が行われていないだけのグレーな状態であるということが分かります。
企業がピンタレストアカウント運用をするなら
それでは企業のアカウントとしてピンタレストを運用する際には著作権を中心にどういった点に注意すればいいのでしょうか。
1.自社が著作権を保有するコンテンツだけをアップする
自社で撮影を行ったものや著作権が自社に帰属するといったキャンペーンなどで集めた画像であれば問題ありません。商用利用の法人アカウントができるだけリスクを避けるのであれば、他アカウントのコンテンツをボードにピン(リピン)するのは避けたほうがよさそうです。
2.ボードをwebサイトに反映したかったら埋め込みを使う
自社サイトにピンタレストのボードを埋め込むことが可能です。その際にも上記1を満たした自社が著作権を持つコンテンツで作成したボードあるほうが安心です。


ウェブサイトに Pinterest を埋め込み(ウィジェット)表示させる | Pinterest Newsroom
3.画像を使われないようにする
また自社のwebサイトで使用している画像を勝手にピンされないようにすることも可能です。自分のサイトのコンテンツがピンされるのを防ぐ方法 | ヘルプセンター
しかしこれはwebサイトから直接のピンができないという話なので、画像を一度保存してアップするといったことはできてしまいます。
個人利用でリスクを避けるために
著作権を侵害している画像をピンしたからすぐに訴訟ということはあまり考えられませんが、発生しうるリスクは認識しておくべきです。個人がこれらのリスクを避けるためにできることが下記となります。
1.自身が著作権を保有するコンテンツだけをアップする
商用利用/法人利用の場合と同じですが、自分で撮影したり購入したりといったような自分自身に著作権のあるコンテンツをアップするのであればリスクはありません。ネットで拾った画像や他人のSNSから無断でアップするにはリスクがあります。
2.シークレットボードにしておく
公に公開せず自分や許可されたユーザーだけが閲覧できるシークレットボードの機能を使っている場合であれば、個人利用・私的利用にあたるので著作権に触れることはなさそうです。自分が見返すブックマークとしての使い方や参考になる画像を集めておくなどといった多くのユーザーに見てもらうことが目的でない場合はシークレットボードで運用すると安全です。
3.Pinterestボタンが設置してあるサイトからピンする
webサイト内にピンタレストボタンが設置されていることがあります。これはピンタレストにすでにピンされている画像であり、サイト運営者からの「積極的にピンタレストにピンしてね」というメッセージですのでピンをしても問題ありません。
自分の所有する画像が勝手に使われていたら?
ピンタレストに自身が著作権を所有するコンテンツが勝手に使われている場合は、ピンタレストに報告することで削除の申請を行うことが可能です。下記のリンク内にあるフォームまたはメールで申請することができます。Copyright | Pinterest Policy(英字ページ)
ピンタレストの著作権についてまとめ
他人の画像を勝手にアップするのは著作権侵害というのは理解できますが、ピンタレストに投稿されているものをピン(リピン)するのもリスクがあるというのは一般のユーザーにとっては理解しにくいことであるように思います。
現在のネット状況においては、ネットで画像を保存してTwitterに上げるといった小さなものからテレビ番組をYouTubeにアップするといった大きなものまで、著作権のない画像や動画のアップロードが無数に行われていることからも、「ピンタレストで著作権侵害しているからすぐに罰金」ということはあまりないのかもしれません。しかし特に商用利用の企業アカウントにおいてはピンタレストのピン(リピン)が著作権を侵害することもあり得るということを認識しリスクは避けておくべきです。
GoogleもYouTubeも著作権的にグレーなところからスタートしました。ピンタレストの著作権の問題も将来的にははっきりわかりやすくなることが予想されますが、現時点では十分にリスクを把握した上で安全な運用を行うことが重要そうです。
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