中小企業のWebマーケティングを成功させる考え方と具体的手法

中小企業

ターゲットの活動がオンラインに移行している現在、企業のマーケティング活動もオンラインへのシフトは必然です。しかし、多くの中小企業で「予算の制約」や「社内の専門知識を持つ人がいない」という理由から、Webやデジタルの取り組みが後回しにされがちなのも事実です。

「とりあえず始めてみよう」と広告代理店の営業マンのアドバイスに従って取り組んでみたものの、「広告やSEO、SNS施策の効果が感じられない。だから、ネットのマーケティングは信用できない」と考えている中小企業の経営者も少なくありません。

当然、大企業と中小企業で適切なマーケティング施策は異なります。

私たちが中小~中堅規模の企業のWebマーケティング支援を数多く手掛けてきた経験から、中小企業のWebマーケティングで「重点的に取り組むべきポイント」と「避けるべき誤ったアプローチ」についてお伝えします。

なぜ中小企業のWebマーケティングはうまくいかないのか?

うまくいかない理由
Webマーケティングがうまくいかない原因

「うまくいく」とは、ここでは「継続的に成果が出続けること」と定義します。中小企業のWebマーケティングがうまくいかない理由は組織ごとに異なりますが、以下のような一般的な理由が挙げられます。

「ネットは楽に儲かる」という勘違いをしている

・ネット広告をやれば売上が上がるはず

・インフルエンサーやYouTuberに紹介してもらえばSNSでバズって売れるはず

・おしゃれなデザインのサイトを作れば問い合わせが増えるはず

人は楽して儲けたいものです。架空の成功事例を信じてWebマーケティング施策を導入したが、期待したほど成果が出なかったというのはよくある話です。成功事例とは成果が出た1社の話であり、導入すれば必ず成果が出るわけではありません。

また、自社の商品やサービスの価値を過大評価することもよくあります。単純に認知(リーチやインプレッション)が増えれば売上も上がると考えているケースが多いですが、実際にはそのようなケースは少ないです。

過去の成功体験を捨てられない

中小企業の経営層には、創業者やオーナーが多く存在します。インターネットが普及する前の成功体験は、オンラインへの適応やWebマーケティングの取り組みを遅らせる要因となります。

これは、Webマーケティングの問題よりも、適切な投資判断ができないという問題が背景にあります。

数字ではなく感覚で判断している

デジタルやWebの特徴として、計測可能であることが挙げられます。しかし多くの場合正確な計測が実施されていないのが実情です。

さらに、適切な指標や計測内容の選定ミスも見受けられます。ホームページのアクセス数や検索結果の順位、SNSのフォロワー数だけを追うのではなく、それが実際の売上や利益にどれだけ寄与しているかを正確に評価することが重要です。

中小企業がやってはいけないWebマーケティング

中小企業が避けるべき施策

インターネットの記事や雑誌にはWebマーケティングに関する情報が溢れています。

魅力的な施策は多くありますが、そのまま模倣するだけでは成功につながる可能性も低いでしょう。予算や人員が限られている中小企業で避けるべきWebマーケティングの手法について考えてみましょう。

成果までに時間がかかる施策はやらない

施策の導入を検討する際、成果までの期間を理解することは重要です。

例えば、SNSアカウントの育成やオウンドメディア(コンテンツマーケティング)によるリード獲得とそのナーチャリングのような施策は、成功するまでに少なくとも半年〜1年程度の期間が必要とされます。数年の期間とコストをかけても、期待した成果を得られないこともあります。

一方、リスティング広告やSNS系の広告運用、レビュー系の施策、フォームなどCV直前の改善、サイト内にCV特化記事を設置するなどは、取り組み始めてすぐに成果を得られる施策です。

中小企業では、時間がかかる施策の導入は難しいことが多いため、短期間で効果が見込める施策を優先することが推奨されます。

“流行っているから"という理由でやらない

「最近流行っているらしい」という理由だけで、SNS媒体やメディア、ツールを導入するのは避けるべきです。

先行者としての参入で成功すれば得られるものは大きいですが、多くの場合中小企業にはより優先度高く取り組まなければならないことがあります。リソースが限られている場合、流行りだけを追うのではなく、自社の課題解決に繋がるものかどうかをしっかりと判断することが必要です。

博打/ギャンブル性の高いものはやらない

成果に時間がかかる施策や流行りの施策でも、導入や撤退のコストが低いものであれば試す価値はあります。しかし、高いリスクを伴う施策に関しては中小企業は避けるべきです。

例えば、300万円をかけて有名YouTuberとタイアップすることや、500万円かけてホームページリニューアルすることは、多くの場合適切な判断とは言えません。「小さい予算で確実に効果が出ること」から優先して実施するべきです。

中小企業のWebマーケティングなにから始める?

Webマーケティングやデジタル施策の選択肢は無数に存在し、どれから手を付けるべきか迷うことが多いです。中小企業が避けるべきWebマーケティングを考慮に入れ、最初に始めやすい施策を以下に紹介します。ポイントは「ゴールに近く」「効果が出やすいもの」を選ぶことです。

検索広告(リスティング広告)をやってみる

Webの広告で集客する場合、最も費用対効果が見込めるのは「Google検索広告」や「Yahoo!広告(検索)」といったリスティング広告(検索連動)です。

検索広告のターゲットは、情報や解決策を探しているユーザーです。適切なサービス・商品・情報を提供することができれば、問い合わせや購入、ダウンロードなどの成果に繋がりやすい施策です。

顧客リスト/見込みリストにメールを送ってみる

ECサイトの場合は顧客リスト、BtoBの場合はリードへのメール送信は、売上や商談を生み出す簡単な手法です。メルマガは古い手法と感じるかもしれませんが、費用対効果の観点からは非常に優れています。ECサイト、webサービス、転職サイトなどがあなたに毎週メルマガを送ってくるのはその費用対効果が高いためです。

ブログを3記事書いてみる

新規顧客や見込み顧客との接点作りには、記事コンテンツが非常に効果的です。オウンドメディアやブログサイトの立ち上げは時間と費用がかかるため、始めは「note」や「はてなブログ」の無料プランで十分です。ドメインの設定などに抵抗がなければ、独自ドメインやサブドメインを取得して利用するのもよいでしょう。

問い合わせや資料請求、購入をする人がどのようなキーワードで検索し、どのようなコンテンツを求めているのかを考え、3つの記事を作成することをおすすめします。検索ボリュームが少なくても、顧客のニーズを解決するコンテンツであれば反響を得られるでしょう。

例えばこの『【水道修理業】リスティング広告で毎月100件の反響を獲得する』という記事がターゲットとしている検索キーワードは毎月数十回しか検索されていませんし、訪問者も数十人ほどです。それでも読者ターゲットが明確で具体的な内容にすることで、毎月安定してお問い合わせをいただくページになっています。

具体的なWebマーケティング施策への考え方

ここからはもう少し具体的に、実際に中小企業で検討されやすいWebマーケティング施策について検討していきましょう。

ホームページ・サイト制作

ホームページやWebサイトにどれだけの金額をかけるべきかは、ビジネスの構造によります。

一般消費者向け製品で公式HPを見る人が少ない場合、HPの制作は必要ないかもしれません。しかし、問い合わせやビジネス上の目標を達成するために必ずHPを経由する場合は、投資を考えるべきです。

大きなプロジェクトを除いて、200万円や300万円もの費用はほぼ必要ないでしょう。デザインに時間をかけるだけで成果が出るわけではありません。優先度が低ければ「Wix」や「Canva」のような月1,000〜2,000円程度で利用できるツールもいいですし最近は「Notion」でサイトを公開するなどもよいでしょう。

関連記事:ホームページ制作を企業ではなくフリーランスに依頼すれば金額安くなる?

リスティング広告・SNS広告・その他広告

リスティング広告は数万円程度の小さな予算から始めることも可能で、成果が出やすい代表的な施策です。Google広告やYahoo!広告は誰でも出稿が可能で、代理店や運用会社に依頼せずとも自社で契約や管理・運用を行うことも可能です。

ただ『広告を配信すること』と『広告を配信して成果を出すこと』には大きな隔たりがあります。

リスティング広告の運用に必要なことは管理画面のキーワードや入札単価設定だけではなく、ランディングページや競合状況・そもそもの商品力まで含めたトータル力です。Google広告やFacebook広告の機械学習による自動運用も進化していますが、媒体の力を十分に発揮するためには経験やスキルが必要なのは飛行機の自動操縦と同じです。

必要なスキルをもった人間がいない場合には運用会社と進めたほうが効率的ですが、運用手数料(フィー)が安いことを売りにしている代理店は避けるのが無難です。

リスティング広告を軌道に乗せるためには管理画面の操作だけでなく、ビジネスの理解とリスティング広告外も含めた全体設計が重要になります。格安代理店は業務を効率化してかかる時間を減らすことと給与が安い人材を活用しコストを下げることで低い手数料を実現しています。やることが決まっていて作業を依頼するのには適していますが、そうでない場合には向きません。

SNSアカウント運用

インスタグラムやX(Twitter)のようなソーシャルメディアやYouTubeの運用は基本的に中長期の施策になるので、リソースが十分にあるわけではない中小企業におすすめすることはあまりありません。

たまたま社内にSNSを伸ばすのが得意な人がいて依頼できるのであれば「1年続けて成果が出なくてもしょうがない」くらいの気持ちでやってみるのはいいかもしれません。

SEO・コンテンツマーケティング・オウンドメディア

一部の業種やサービスでは検索結果の上位に表示させることが売上に直結するケースもあります。それ以外ではキーワードが検索で上位表示されたからといって売上が大きく伸びることはありません。SEOで一攫千金を狙うのは諦めてください。

最近になっても毎月数万円のSEO対策費用を業者に支払い続けているという話をまれに聞きますが、95%くらいは解約して問題ありません。

多くの記事を作成・上位表示させて見込み客との接点をつくるコンテンツマーケティングも一時期流行し、現在でもコンテンツに力を入れている企業も少なくありません。力の入れ方にもよりますが、目に見える効果まで半年〜1年くらいの期間を覚悟できるのであれば選択肢のひとつです。すぐに効果が出るものではないので他の施策と同時進行になるケースがほとんどです。

MA・CRM・SFA

潜在顧客を集めてナーチャリング(育成)して顧客にするという話もわかるのですが、ほとんどはリード(見込み顧客)数の不足という理由でうまくいきません。商材の特性や単価にもよりますがリードが数百・数千件貯める予定がないならMAやSFAを考える必要はありません。

中小企業がWebマーケティングにかける予算

Webマーケティングを検討する企業から「どのくらいの予算が必要なの?」と質問されることがあります。

これは条件によって幅がありすぎて回答できず、例えるなら「家はいくらで買える?」「時計はいくらする?」という質問をしているようなものです。300万円の家もありますし10億円の家もあります。1,000円の時計でいい人もいれば1億の時計を購入したい人もいます。

予算はゴール/目標から逆算して決める

広告運用の場合には問い合わせやリード獲得、売上などの目標があればゴールから逆算して算出することが可能です。

“月に受注を1件増やしたい"工務店のケースを考えます。見学会やイベント来場の獲得単価が5万円、商談化率が20%、商談からの契約率が20%だと仮定します。この場合1契約に必要なリードは25件になりますので、獲得単価が5万円だとすると毎月125万円が目標から逆算した広告費になります。

“BtoBで月に50件リードを獲得したい"とします。リードの相場が5,000円であれば毎月25万円の予算が必要かもしれません。

中小企業のWebマーケティングパートナー/代理店選び

とりあえず「リスティング広告の業者をネットで探す」「ホームページリニューアルの一括見積もりサービスに申し込む」はよくある失敗するパターンです。

施策や外注先を選定することはもちろん重要なのですが、それより大事なのは「その広告をやるべきなのか?サイトリニューアルをするべきなのか?優先度はどうなのか?予算の配分はどうするか?」ということです。

広告の営業マンは「広告で売上を増やすべきです!」と営業します。

SNS運用の営業マンは「いまはインスタやってないとユーザーにアプローチできないのでやばいです!」と煽ります。

制作会社の営業マンは「なによりもまずはサイトリニューアルをすべきです!」と提案するのが仕事です。

中小企業のWebマーケティングには個別施策よりも前に全体図が必要です。ここがなければまずはここから始めてください。SEO会社やリスティング運用代行会社の営業担当のような特定の商材(ツール)を売るのが仕事の人に全体のアドバイスを求めるべきではないことは少し考えればわかります。

まとめ

中小企業のWebマーケティングではこの2点が重要になります。

・マーケティング上のボトルネックを探してそれを解決するための施策を行う

・小さくても成果に近いものからはじめる

個別施策のクオリティももちろん重要なのですが、予算や工数に限りがある中小企業ではそれ以上に施策の優先付けに失敗しないようにしてください。認知、購入率、成約率、リピート率などビジネスどこを改善する施策を行うべきなのか戦略を間違うといくら戦術がうまくても成果には結びつきません。

そのなかでなにを採用するかといえば効果が出やすいものです。もちろんなかには数値化しにくい重要なものもありますが、その前にやるべきことはたくさんありますので最初は考えなくても大丈夫です。

Webマーケティングは「導入すれば成果が出るもの」ではなく「マーケティング活動をサポートする手段やツール」に過ぎません。なんとなくよさそうなものを導入するのではなく、深い顧客と自社サービスの理解のもとに施策を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

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著者名: にしりゅう

Webマーケティングと生成AI分野のエキスパート。10年以上にわたり、広告を中核としたWebマーケティング戦略の立案から実行までを一貫して支援。月額予算100万円前後の中小規模プロジェクトを得意とし、50件を超える成功事例を保有。施策横断的なアプローチに定評あり。最近は趣味の格闘技とトレーニングにのめり込んでいる。

Posted by kaizuka